距離減衰式を用いた大地震時の揺れの推定方法について、防災科学技術研究所のK-NETの観測データを用いて、その妥当性を検討してみました。対象とした地震は、2016年4月に発生した熊本地震です。
K-NETでは、熊本地震の震源付近に強震計が設置されています。 これを仮想的にGeo-Stickの計測ポイントと見なし、4月13日以前の小規模地震について、距離減衰式に基づく理論最大加速度に対する計測最大加速度の倍率を求めました。 近隣の想定震源断層については、計測ポイントとの距離と想定マグニチュードから計測ポイントにおける理論最大加速度を求め、これに倍率をかけて推定最大加速度を求めました。 これと、熊本地震において各計測ポイントで計測された最大加速度を比較しました。
下図には、防災科学技術研究所のJ-SHISを参考に、布田川断層帯の想定震源断層とK-NETの観測点の位置関係を示しました。
下図のグラフが、4つのK-NET観測点で得られた結果です。 これらからは、ばらつきはあるものの、想定震源断層について推定した最大加速度が実測値と概ね一致していることと、小規模な地震時に得られた理論最大加速度と計測最大加速度との倍率が、大地震時でも良い近似を与えていることがわかります。 また、観測点ごとに理論最大加速度と計測最大加速度との倍率が異なっていることもわかります。
布田川断層帯 (想定震源断層) |
想定マグニチュード (Mw) |
KMM005 | KMM006 | KMM008 | KMM009 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
距離 (km) |
TPA (gal) |
距離 (km) |
TPA (gal) |
距離 (km) |
TPA (gal) |
距離 (km) |
TPA (gal) |
||
宇土半島北岸区間 | 6.5 | 7.92 | 399.48 | 6.41 | 441.30 | 17.48 | 242.85 | 15.78 | 262.10 |
宇土区間 | 6.5 | 11.91 | 317.27 | 4.72 | 498.74 | 3.50 | 549.26 | 17.94 | 238.05 |
布田川区間 | 6.7 | 26.86 | 202.22 | 14.42 | 322.98 | 7.28 | 462.73 | 33.50 | 165.12 |
布田川断層帯 (想定震源断層) |
想定マグニチュード (Mw) |
KMM005 | KMM006 | ||
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距離 (km) |
TPA (gal) |
距離 (km) |
TPA (gal) |
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宇土半島北岸区間 | 6.5 | 7.92 | 399.48 | 6.41 | 441.30 |
宇土区間 | 6.5 | 11.91 | 317.27 | 4.72 | 498.74 |
布田川区間 | 6.7 | 26.86 | 202.22 | 14.42 | 322.98 |
布田川断層帯 (想定震源断層) |
想定マグニチュード (Mw) |
KMM008 | KMM009 | ||
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距離 (km) |
TPA (gal) |
距離 (km) |
TPA (gal) |
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宇土半島北岸区間 | 6.5 | 17.48 | 242.85 | 15.78 | 262.10 |
宇土区間 | 6.7 | 3.50 | 549.26 | 17.94 | 238.05 |
布田川区間 | 6.7 | 7.28 | 462.73 | 33.50 | 165.12 |
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